Yチェアの美しい形ができるまで
Yチェアの美しい形の元をたどれば、
中国のイスにたどり着きます。
ハンスJウェグナーは
Yチェアをデザインする以
前の1943年、
中国・明代の
「圏椅(クァン・イ)」「曲ろく(キョクロク)」
というイスを本で目にしたのがはじまりです。
その圏椅の美しい曲線と、
特に“体に沿うような背板のS字”に
ウェグナーは興味しんしん!でした。
その理由は、
その当時、腹筋や背筋を使わなくても楽に座れるイスを
研究していたウェグナー。
その人間工学的な面からも興味を持ったからだと推測されます。
その当時、背骨のカーブに沿って
背板が支えてくれるようなイスは、
ありませんでした。
圏椅の形を元に、
余計な要素を少しずつ省いていくことで
ウェグナーの求めた形、
シンプルなYチェアの形にたどり着いたのです。
段々とシンプルにまとまっていく様子を
3台のイスを比べながら
一緒に見ていきましょう。
- 1368年~1644年
- 中国・明代の椅子「クァン・イ」が制作される。
- 1944年
- フリッツハンセン社から発売さ今も製造されています。
チャイナチェア(FH4283)
アームの支え木は
6本でした。
中国の雰囲気を色濃く感じるクラシカルな形です。
この時、Yチェアのアームのささえ木の特徴的なカーブは、
アームの支え木の一番手前にあたる左右の2本。
控えめですが美しいカーブです。
アームから背にかけてのカーブは、木を曲げているわけではなく、
3つのパーツの組み合わせで出来ています。
高度な、職人技が必要なつくりです。
- 1945年
- チャイニーズチェア(FH1783、現在はPP66として製造されています)
アームの支え木は
4本になりました。
木を曲げる技術を使って作られています。
一つのパーツをグイッと曲げることで出来た、アームから背にかけての曲線。
これにより、重量の軽いイスにすることができました。
制作の手間もずいぶん減らすことができました。
アームの繊細なカーブや、座面側面の木の削りなど
クラシカルなつくりを省かれ、シンプルになりました。
アームのささえ木の特徴的なカーブはそのままです。
- 1950年
- カールハンセン&サン社 Yチェア(CH24)
アームの支え木は
究極の2本のみに!
アームを短くすることで、ささえ木は2本のみなりました。
Yの背板にすることでさらに、重量の軽いイスにになりました。
圏椅から残されたのは3つの要素のみ
- アームの半円
- アームを支える2本の曲線
- 薄くスッと伸びる背板
どの角度から見ても、
このシンプルな3つの要素が美しく見えるのが、Yチェアなのです。