古代エジプトのデザイン理念とモダンな感性、そして流れるような造形美を融合させた「エジプシャンチェア」は、フィン・ユールの独創性を象徴する一脚です。デザイン評論家からは「奇跡的な調和」とも称され、彼の代表作である「チーフテンチェア」と並び、フィン・ユールが追求した“空間の中のもうひとつの空間”というコンセプトを見事に体現しています。
1949年、コペンハーゲンで開催されたキャビネットメーカーズ・ギルド展で初めて披露され、「チーフテンチェア」とともに大きな注目を集めました。この展覧会での成功をきっかけに、フィン・ユールは国際的に評価され、“デンマークモダンの父”として知られるようになりました。
後年、フィン・ユールはパリのルーヴル美術館で見た古代エジプトの椅子に強く魅了され、その構造を自身のデザインに取り入れたと語っています。