アートと彫刻的な美しさが融合。
優雅な所作までデザインされた、BUTTERFLY TABLE。

チーフテンチェアと並ぶ、型破りなモダンデザイン
バタフライテーブルは、デザイナー、フィン・ユールが最も創造的な力を発揮していた1949年、コペンハーゲン家具職人ギルド展で発表されました。
このテーブルは、名匠の家具職人ニールス・ヴォッダーによって製作されました。
しかし、そのデザインは当時としては非常に斬新で製造コストも高額だったため、実際に作られたのはごくわずかでした。

△ [左] チーフテンチェア / [右] バタフライテーブル
このテーブルの価値は、その歴史的な文脈にあります。
世界的な名作チーフテンチェアやエジプシャンチェアといったフィン・ユールの代表作と並んで展示された、時代の先駆けとなったデザインです。
単なるコーヒーテーブルの枠を超え、北欧モダンデザインの歴史において、「型破り」な美意識を持ち込んだ重要なマスターピースとして誕生しました。

△ フィン・ユールによるバタフライ テーブルのオリジナル水彩画(写真:Pernille Klemp、所蔵:デザインミュージアム デンマーク)
出典:House of Finn Juhl公式サイト
日常でアートを纏う。機能に縛られない、彫刻のようなデザイン
このテーブルの核心は、フィン・ユールが目指した「日常で使えるアート」という思想です。
「自由なフォルム」の追求

ユール自身が「機能が何であれ、制約を課さない『自由な』フォルムです」と語った通り、
従来のテーブルの常識を打ち破る非対称の3本脚デザインを採用。
デザインと実用性の両立

ユニークな3本脚と天板の形状は、実はソファに座りながらテーブルをぐっと引き寄せやすいように緻密に計算されています。
これは、彫刻的な美しさを保ちながらも、使い勝手の良さを両立させたフィン・ユールならではの工夫です。
この非対称な造形が、他のテーブルにはない特別な存在感を空間に与えます。
3本脚が叶える、軽やかな佇まい。優雅に広がるバタフライ機構

バタフライテーブルは、その名の通り、蝶が羽を広げるような独創的な折りたたみ・拡張の仕組みを持っています。
吊り下げられた天板を持ち上げ、スッと中央に滑らせて固定する機構は、操作する所作自体が非常に優雅です。

また、繊細に見える3本の脚で天板を均等に支える構造は、見た目の軽快さを保ちつつ、高い機能性を実現。
このエレガントな拡張機構こそ、フィン・ユールのデザインが持つ「軽やかさ」と「緻密な職人技」が融合した証です。
「買った時が最高ではない」経年変化を設計した、フィン・ユールの哲学

バタフライテーブルの真の魅力は、その経年変化(パティーナ)にあります。
温かいウォルナット材に埋め込まれたのは、何も加工していない真鍮の象嵌。
多くの家具が均一な美しさを保つことを目指す中、このテーブルは変化を前提として作られています。

△ 真鍮 経年変化の比較 [左] 真鍮 経年変化前 / [右] 真鍮 経年変化後
出典:House of Finn Juhl公式サイト
真鍮や銀は、時間と共に酸化して色が深まり、ウォルナット材と自然に調和。ハウス・オブ・フィンユールでは、
職人が白い手袋をして組み立てることで、新しい持ち主の「最初の痕跡」が残るように配慮しています。
これは、素材の個性をそのまま愛でるというフィン・ユールの深い哲学であり、
使う人や場所によって個性が増していく「物語を語る家具」として、量産品にはない唯一無二の価値を生み出します。
時を超えて価値を増すマスターピース

このテーブルのデザインは当時あまりにも斬新で、また製造コストが非常に高額だったため、初期の生産数はごくわずかでした。
この背景が、バタフライテーブルを単なる機能家具ではなく、「手に入りにくい芸術品」としての地位へと高めています。
フィン・ユールの代表作と同時期に生まれた、細部にまでこだわった職人技の証であるこのテーブルは、
所有する喜びと、時を超えて価値が高まる財産としての魅力を兼ね備えています。
デザイナーについて
▶ Finn Juhl(フィン・ユール)

フィン・ユールは、1912年コペンハーゲン生まれ。当初、父親の反対で建築を学びましたが、
その過程で現代美術への関心を深め、独自の発想で家具デザインを手がけるようになりました。
1930年代に北欧モダンデザインが台頭する中、1937年の家具職人ギルド展への出展を機に頭角を現します。
ボーエ・モーエンセンやハンス J. ウェグナーと並ぶデンマーク近代家具デザインの代表的な人物です。
「世界で最も美しい椅子」と称される「No.45」や「チーフテンチェア」など、
優雅な曲線と彫刻的な造形が特徴。家具を芸術作品として捉える独自の発想と造形力で、数々の傑作を生み出しました。