椅子の中の椅子「ザ・チェア」PP501

ウェグナーが語る、デザインの真髄

▲ ハンス J.ウェグナー(出典 PP Møbler Handbook)
「いらないものを削ぎ落とし、本当に大切なものだけを残す。
"シンプルにする作業"こそが、デンマークモダンを生み出した」——。
これは、生涯500脚以上もの椅子を手がけた「椅子の巨匠」ハンス J. ウェグナーの言葉です。
そして、彼が1949年にデザインし、「ラウンドチェア」と名付けたPP501こそ、その哲学が結晶となった一脚。
(1950年デザインのレザー/ファブリックモデルは ▶PP503)
4本の脚、座面、そして一体になった背もたれとアームレストから生まれる飾らない美しさには、デンマークの木工技術とデザイン哲学がぎゅっと詰まっており、ウェグナーが"最高の仕事"と自負する唯一無二の存在なのです。
歴史を変えた一脚、「ザ・チェア」の誕生

▲ジョン・F・ケネディ(出典 PP Møbler Handbook)
PP501/503が世界中で有名になったのは、1960年のアメリカ大統領選でのテレビ討論会がきっかけです。
ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンが向かい合った、あの歴史的な舞台で、二人が座っていたのがPP503だったのです。この出来事をきっかけに、P501/503の「心地よさと確かな品質」が世界中の人々に伝わり、やがて「ザ・チェア(これぞ椅子の中の椅子)」という愛称で広く親しまれるようになりました。
ケネディ大統領が座った象徴的なイメージは、アメリカ政治史における偉大な瞬間のひとつとして刻まれ、
デンマークのモダンデザインを世界に広める大きな力となりました。
なぜ選ばれる? 触れて、座って、五感で感じる本物の心地よさ

PP501は、なめらかで温もりのある木部と、軽やかで涼しげな籐という異なる素材の組み合わせが、五感に心地よく響く特別な一脚です。
ウェグナーが目指したのは「限りなくシンプルに、木に命を吹き込む」こと。
その哲学は、木の柔らかな曲線と籐の繊細な表情が織りなす美しいハーモニーとなって息づいています。
デザイン性と強度が両立したデザイン

4本の脚は、貫(ぬき)のないきわめてシンプルなデザイン。
中央部が膨らんだ優美な形状は、見た目の軽やかさと、強度を両立させるための工夫です。
この最も太い部分と座面のフレームが接合することで、見た目以上の揺るぎない安定感を実現しています。
元々家具職人だったウェグナーならではのこだわりです。

また、PP501のシンボルでもあるアームから背もたれへの一体的なラインは、一本の木を曲げているように見えながらも、実は3つのパーツを巧みに組み合わせて作られています。

その美しい繋ぎ目(ジョイント)は、指を組み合わせたように精巧な「フィンガージョイント」でしっかりと組まれ、デザインのさりげないアクセントにもなっています。
一見シンプル、でも奥が深い。座る人を想う、緻密な設計。
体に合わせて緩やかにカーブし、後方にわずかに傾斜した座面。
少し内側に傾いた幅のあるアームは、手を自然に置けるだけでなく、その先のわずかにせり出した形状には指先を心地よくひっかけられる工夫も。
そして、背中に沿い体をしっかりと支えてくれる幅広の背もたれ。
これらすべてに、ゆったりとした気持ちで長時間快適に座るための、ウェグナーの工夫が詰まっています。
籐が織りなす美しさ、軽やかさと強さ

籐の網目が力強くも繊細な模様を作り出し、PP501の座面を飾っています。
PP503とはまた違う、見た目にも軽やかな印象を与えるのがこの籐張りモデルの特徴です。

また、PP501の初期モデルでは、まだフィンガージョイントの技術が確立されていなかったため、アームから背もたれへの繋ぎ目を隠すために籐が巻かれていました。この籐は、PP501の象徴的なデザインとして今も愛され続けています。

熟練の職人の手仕事によって、一本一本丁寧に編み込まれています。
自然の恵み「シェルターツリー」が育む特別な価値

PP501には、通常の木材よりはるかに大きな木が必要です。
これらの木は、まるで森の守り神のように、伐採された後に新しく芽吹く若い木々を強い日差しや風から守り、健やかに育てるために残される「シェルターツリー」から生まれます。
シェルターツリーは、森を守り、未来へとつなぐ大切な木。
樹齢約200年で個別に伐採される希少な木で、一本の木から得られる高品質な丸太は一本のみ。

(出典 PP Møbler official website )
伐採後、PPモブラーの工房でまだ湿っている間に、必要な木材を丁寧に切り出し、約2年かけて調整(乾燥など)されます。
PPモブラーでは、このような希少なシェルターツリーを使い、手間と時間をかけて最高の品質を追求することで、世代を超えて愛される家具を生み出しています。
▶製造過程の様子はこちらのYoutube動画をぜひご覧ください。
PP Mobler(PPモブラー)

▲ 左:ソーレン・ホルスト・ピダーセン(PPモブラー2代目代表) 右:CONNECTの高木社長
PPモブラーは、ウェグナーの家具を最も多く作っている、デンマークの工房です。大規模な量産を得意とするメーカーとは異なり、PPモブラーは高い技術を要する、製造が難しい製品を、機械技術を上手くとりいれながら、熟練の職人が一つひとつ丁寧に作り続けています。
職人の丁寧な手仕事と、地球に優しいものづくりへの深いこだわりは、PPモブラーの大切なDNA。ウェグナーの想いを受け継ぎ、世代を超えて使い続けられる家具を作るという理念は、このPP501/503にも脈々と息づいています。
▶PP Mobler については、こちらのブログもぜひご覧ください。
スタッフレビュー
心にゆとりをくれる、籐の心地よい「余白」

PP503の安心感ある安定性とは一味違う、PP501の軽やかさ。
籐の座面がもたらすこの心地よい「余白」こそが、大きな魅力です。
その涼やかで繊細な見た目は、お部屋に圧迫感を与えることなく、空間に自然の風合いをプラスしてくれます。
お気に入りの本を読んだり、コーヒーを飲んだり。
このPP501は、そんなささやかな時間を、特別なひとときへと変えてくれるでしょう。
こんな方におすすめ

「本当に良いものを、長く大切にしたい」と願う、審美眼を持つ方。
シンプルながらも、唯一無二の存在感を放つ、上質で洗練された空間を創りたい方。
日々の暮らしに、心の豊かさをもたらす、特別なストーリーを持つ最高の一脚を迎え入れたい方。
籐が持つ、涼やかで繊細な表情に心惹かれる方。
椅子に座るだけでなく、その姿を眺める時間も大切にしたい、アート作品のような家具をお探しの方。
おすすめコーディネート

静かに光が差し込む空間にたたずむPP501。
籐と木の温かみが、どこかほっとするような空間を作り出しています。
この椅子は、他の家具と合わせることで空間を彩るだけでなく、一脚だけでも絵になる、圧倒的な存在感を放ちます。
シンプルで洗練された佇まいは、どのような空間にも溶け込みながら、そこに置くだけで特別な空気感を生み出してくれます。