鮮やかな色彩をまとう、北欧の名作収納。
フィン・ユールが愛妻へ贈った、特別なキャビネット| Glove Cabinet

Glove Cabinet(グローブキャビネット)は、1961年にフィン・ユールがデザインした特別な家具です。
この作品は、愛する妻ハンネ・ウィルヘルム・ハンセンのために、手袋を収納する目的で作られました。
その特別な物語とともに、同年の「キャビネットメーカーズ・ギルド展」で世に発表されました。
デザイナーの哲学が息づく、時代を超えた名作

60年以上が経過した今も、その繊細な佇まいは世界中で愛され続けています。
機能性の中に「喜び」や「遊び心」を求めるというフィン・ユールの哲学が、この作品の価値を高めています。
この家具は、単に物をしまう機能だけでなく、日々の暮らしに心豊かな彩りを与えるという、
フィン・ユールならではの美意識を体現しています。
外観からは想像できない、鮮やかな色彩

△ 閉じた状態のグローブキャビネットの写真
多くの収納家具は、外側も内側も一貫したデザインで統一されています。
しかし、グローブキャビネットは、その常識に軽やかな変化を加えています。
本体には、美しい木目を持つチェリー材を使用しており、落ち着いた上品な印象です。

ところが、キャビネット本体を左右に開くと、 遊び心のあるカラフルなペイントが施された引き出しが目に飛び込んできます。これは、フィン・ユールが暮らしの中に意図的に加えた「日常の小さな楽しみ」です。

この鮮やかな色彩は、使うたびに心を弾ませてくれるでしょう。
単なる機能だけでなく、人々の感情的な豊かさもデザインされた証拠なのです。
軽やかな佇まいと、美しさが光る実用的な構造。

グローブキャビネットの構造は、従来の収納家具とは異なる、軽快な設計が特徴です。キャビネット全体を支えるのは、磨き上げられたスチール製の細い脚。

そして、その足元には、デザイン性の高い真鍮のパーツとキャスターが取り付けられています。
キャスター付きで移動もスムーズという実用性を持ちながら、真鍮の輝きを加えることで、家具全体に軽快さが生まれ、
まるで床から少し浮いているかのような洗練された佇まいを実現しています。
「なぜ、喜びを奪うのか?」デザインに込められた、大切なメッセージ
このキャビネットは、発表当時、実用性のみを重視する批評家たちから、
その装飾性が批判されました。それに対し、フィン・ユールは、自身の哲学をこう表現しています。

「しかし、なぜあらゆるものから喜びを奪ってしまうのでしょうか?」
彼は、家具は単なる機能の道具ではなく、人々の感情や想像力を豊かにする存在であるべきだと信じていました。
グローブキャビネットは、「暮らしの中に喜びを」という、フィン・ユールの温かいメッセージが込められた、自由な創造性の象徴なのです。
「買った時が最高ではない」経年変化を設計した、フィン・ユールの哲学

グローブキャビネットは、フィン・ユール家具の製造権を持つハウス・オブ・フィンユールの工房で、
熟練の職人の手によって丁寧に製造されています。

メイン素材であるチェリー材は、その仕上げにおいて、木材本来の温かい質感と繊細な色合いを最大限に引き出し、
使い込むほどに味わいが増す経年変化(パティーナ)を設計しています。

そして、脚部には磨き上げられたスチールと真鍮(しんちゅう)が施されています。
これこそが、安価な量産品にはない、素材の個性を愛でるというフィン・ユールの哲学です。
長く愛用することで価値が増していく「物語を語る家具」としての、唯一無二の魅力に溢れています。
おすすめのコーディネート - 洗練された北欧モダンな空間 -

△ Chieftain Chair (チーフテンチェア)/ Pelican table(ペリカンテーブル)/ Pelican Chair(ペリカンチェア)/ Glove Cabinet(グローブキャビネット)
フィン・ユールの他のコレクションと組み合わせることで、空間全体が洗練された北欧モダンの雰囲気で統一され、安らぎの場を演出します。
デザイナーについて
▶ Finn Juhl(フィン・ユール)

フィン・ユールは、1912年コペンハーゲン生まれ。当初、父親の反対で建築を学びましたが、
その過程で現代美術への関心を深め、独自の発想で家具デザインを手がけるようになりました。
1930年代に北欧モダンデザインが台頭する中、1937年の家具職人ギルド展への出展を機に頭角を現します。
ボーエ・モーエンセンやハンス J. ウェグナーと並ぶデンマーク近代家具デザインの代表的な人物です。
「世界で最も美しい椅子」と称される「No.45」や「チーフテンチェア」など、
優雅な曲線と彫刻的な造形が特徴。家具を芸術作品として捉える独自の発想と造形力で、数々の傑作を生み出しました。
ブランドについて

HOUSE OF FINN JUHL(ハウス・オブ・フィンユール)は、2001年フィン・ユールの夫人ハンネ・ヴィルヘルム・ハンセンにより、
フィン・ユール家具の製造と復刻生産に関する権利を与えられており、 当初の意図と同じ価値観と同じ品質で家具を製造しています。
このアプローチがなければ、フィン・ユールのトレードマークであるユニークな仕上げと繊細なディテールを実現することは不可能でしょう。
最高品質の素材は、何世代にもわたって使い続けられる、エレガントで快適、耐久性のある家具を作るための基礎となります。
したがって、最高級の素材を正確に選択することが、HOUSE OF FINN JUHLの主な焦点となっています。
今日、フィン・ユールのコレクションは40種類以上の作品から成り立っており、
そのすべては高い品質を保ち最上の敬意を払い製造されています。