1956年にデザインされた「フランスチェア」は、デンマークの家具メーカー〈France & Son〉のために製作され、主にアメリカ市場向けに発表された作品です。
シンプルで控えめな印象ながら、座面と背もたれがフレームからわずかに浮いたように見える軽快な構造や、アーム先端の“ペーパーナイフ”形状など、フィン・ユールらしい繊細なディテールが際立ちます。
1950年代、フィン・ユールは〈France & Son〉との協働を通じて国際的な成功を収めました。英実業家チャールズ・W・フランスが創業したこのメーカーは、デンマーク家具輸出の約6割を担うほどに成長し、フィン・ユールのデザインを世界へと広める重要な役割を果たしました。控えめな造形の中に宿る洗練と機能美が、今もなお愛され続ける名作です。