織田憲嗣さんに教わる、一生ものの北欧家具と豊かな暮らしのつくり方

家の中で過ごす時間が長くなるほど、自分の「暮らしのあり方」について考える機会も増える気がします。
今回ご紹介するのは、世界的な椅子研究家であり、稀代の家具コレクターとしても知られる織田憲嗣(おだのりつぐ)氏。
実は織田先生、長年慈しんでこられた北海道の広大な邸宅を現在は手放されています。膨大なコレクションを整理し、今のライフスタイルに合わせた、より身軽でコンパクトな住まいへと移り住む決断をされました。
今回お届けするのは、そんな貴重な「当時の邸宅」でのひとコマです。

驚くのは、数えきれないほどの家具や名作椅子がひしめき合っているはずなのに、不思議と静かな空気が漂っていること。
それは単に配置の妙だけではありません。妥協せずに「本物を置く」という確固たるこだわりがあったからこそ。そして、その選び抜かれた本物たちに敬意を払い、広い家や多くの家具を常に清らかに保つための「お手入れ」を毎日欠かさなかったからこそ得られた、本質的な空間の美しさなのだと気づかされます。

これほどまでの名作に囲まれた暮らしは、一見すると私たちとは少し遠い世界の話のように感じるかもしれません。けれど、お話をじっくり紐解いていくと、そこには誰もが今日から実践できる「美しい暮らし」へのヒントが溢れていました。
かつての邸宅の静謐な空気感とともに、織田先生が大切にされている「生活者としての視点」や「本物との向き合い方」に、ぜひ触れてみてください。
▼ 今回ご紹介する動画はこちら(お時間のある方はぜひ再生しながらご覧ください)
【織田憲嗣】家具の研究者が愛した自邸。暮らしとデザインへの深いまなざしに触れる『What a room!』 vol.5
家づくりは「外から内へ」ではなく、「内から外へ」

日本の家づくりは、土地を区画し、ハウスメーカーが家を建て、最後にそこへ家具を当てはめていく「外から内へ」が一般的です。
しかし織田先生は、
「この家具を使いたい。こんな暮らしがしたい。空間はこうでありたい」
と、まったく逆の「内から外へ」のアプローチで家を建てられました。先生はなんと、1/100スケールの平面図と実寸大の家具模型を作り、「ここにこの家具を置きたいから、これだけの広さが必要だ」と、内側の空間から外枠を決めていったそうです。

さらにハッとさせられたのは、「総建築費の10%は、必ず内部空間(家具や照明)のために残しておくべき」という言葉。 家という「箱」に予算を使い切り、中身の家具が安価な間に合わせになってしまうと、せっかくの空間の質がチープになってしまう。

照明ひとつをとっても、重心を低くし、必要なところだけを照らすことで、空間に潤いと奥行きが生まれるのだと語ります。
誰もが「生活者の視点」を持つことの豊かさ

織田先生の口から何度も語られたのが、「自分たちの暮らしを最優先にする」という価値観です。
仕事のために暮らしを犠牲にするのではなく、自分の暮らしを最優先に考える。そして、そのためには「生活者の視点」を持つことが極めて重要だとおっしゃいます。

先生ご自身、なんと毎日の家事や掃除をご自身でこなし、お風呂上がりには水滴一滴残さないようにバスタブや壁を拭き上げているのだとか!

「朝起きたらパジャマは全部畳んで、ベッドメイキングをちゃんとして。そういう価値観を自分の中に持って課していくことで、丁寧な暮らしができていく。丁寧な暮らしっていうのは、美しい暮らしに繋がっていきます。」
北欧の美しいデザインや機能的な家具が生まれるのは、ブランドを率いるトップやデザイナー自身が、毎日の家事を分担し「生活者の視点」を持っているから。日々の暮らしを慈しむ姿勢が、すべての根幹にあると言います。
「感性を磨く」=「本物体験を重ねる」こと
世の中にファストなモノやコピー品が溢れるいま、私たちはどうモノと向き合えばいいのでしょうか。

織田先生は、「本物とは何か」を日々問い続けていると言います。本物とは、作り手が情熱を持ち、正当な権利のもとで作られたもの。それを使うことで、自分のなかに誇りや豊かさが芽生え、心が揺さぶられるような気持ちになるもの。
ただ、「本物」といっても、高価な名作家具を買うことだけではありません。
「感性とは、感動する力のこと。感性を磨くということは、本物体験を重ねることです」

道端に咲く一輪の野の花を立ち止まって美しいと眺めること。 ちょっとした一杯のコーヒーでも、手間をかけてドリップしていただくこと。季節の果物を、お気に入りの美しい器にそっと盛り付けてみること。 たまには少しお金を貯めて、インテリアや器が厳選されたお店で食事をしてみること。
そんな日々の小さな「本物体験」の積み重ねが感性を磨き、やがては「一生寄り添い、子供や孫にまで受け継いでいけるモノ」を選ぶ力へと繋がっていくのだそうです。
そして最後に、織田先生はモノとの関係について、こんなハッとさせられる言葉を教えてくれました。

「本当にいいモノは、それを使う人に『振る舞い』を要求してきます。たとえば、名作と言われるような美しい椅子に、だらしない格好で座るなんてことは似合わないですよね」
職人が情熱を込めて作った本物には、自然と背筋が伸びるような、そんな力があります。 良いモノを迎えるということは、自分自身の振る舞いや、日々の所作までをも美しく引き上げてくれるということなのかもしれません。
本編はこちらから
本編はこちらから▶【織田憲嗣】家具の研究者が愛した自邸。暮らしとデザインへの深いまなざしに触れる『What a room!』 vol.5
いかがでしたでしょうか? 文字でお伝えするだけでも胸が熱くなるお話ばかりですが、実際の動画では、北海道の美しい自然に囲まれた織田邸の素晴らしい空間や、名作家具たちの佇まい、そして何より織田先生の穏やかで情熱的な「声」を味わうことができます。
「消費者ではなく、使用者(ユーザー)になってほしい」という先生の願い。
モノの選び方だけでなく、これからの人生の歩み方そのものを教えてもらったような気がします。ぜひ、週末のリラックスタイムや、夜の静かなご褒美時間に、動画を再生してみてくださいね。
きっと、明日からの景色が少し違って見えるはずです。
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この記事を書いた人
CONNECT
こんにちは。ライフスタイルショップ「CONNECT(コネクト)」です。北欧のブランド(ルイスポールセン・フリッツハンセンなど)を中心に照明・家具・ヴィンテージ家具やインテリア雑貨をセレクトし、販売しています。 また、インテリアから考えるお家づくりも手がけています。











