SILVERWARE CABINET
1949年、フィン・ユールは銀食器を収納するためのキャビネットを発表しました。このキャビネットには、彼のデザインへのこだわりが強く表現されています。同年のキャビネットメーカーズ・ギルド展では、現在彼の象徴となっている数々の家具と共に出品されました。当時は「チーフテンチェア」にばかり注目が集まり、このキャビネットはすっきりとした構造の美しさや洗練されたバランスを持っていたにもかかわらず、批評家たちにはほとんど見過ごされていました。
名匠ニールス・ヴォッダーによって製作されたこのキャビネットは、幾何学的な箱型の本体が、軽やかで生き生きとした形のフレームによって、床から浮かび上がっているような構造をしています。この相反する2つの要素を、1つの家具の中で完璧に調和させているのが特徴です。
その構造は、1940年代にフィン・ユールが追求した「a room within a room(部屋の中の部屋)」という考え方を引き継いでいます。彼は家具を単なる道具ではなく「それ自体が小さな建築(空間)」であると考え、支える側と支えられる側、あるいは有機的な形と幾何学的な形の関係性を表現しました。これにより、家具特有の見た目の重苦しさをなくしています。
また、横に並んだ数多くの引き出しは、視線を自然と横へ流す美しい水平方向のリズムを生み出しています。そこに等間隔で配置された小さなつまみが、規則正しいドットパターンのような効果を与え、退屈さを感じさせない生き生きとした表情を作り出しています。
本体にはオレゴンパインという木材が使われており、引き出しは付属の真鍮(しんちゅう)製の鍵を使って、縦方向にロックできるようになっています。