ルイスポールセン「パテラ」のデザイナー・オイヴィン氏のスタジオへ
こんにちは。CONNECTのミキです。
北欧インテリアの仕事を始めて、ちょうど4年。日々たくさんの北欧家具や照明に触れる中で、「実際にデザインが生まれている場所を、この目で見てみたい」と思うようになり、今年の6月、ずっと憧れていたデンマークへ行くことを決めました。
実は、今回が初めての海外旅行。少しの不安もありましたが、それ以上に「本場で確かめたいこと」がたくさんあり、思い切って飛び立ちました。
いざ、憧れのオイヴィン・スロットさんのスタジオへ

デンマークの家具の祭典ともいわれる「3days of design」の会期に合わせて、さまざまなメーカーが素敵なイベントを企画してくださっていました。
その中でも特に楽しみにしていたのが、ルイスポールセンが企画したデザイナー訪問ツアー。

なんと、ルイスポールセンの「Patera(パテラ)」をはじめ、さまざまなプロダクトを手がけるデザイナー、オイヴィン・スロット(Øivind Slaatto)さんのデザインスタジオを訪問できることになったのです。
デザイナー本人から直接お話を伺えるなんて、夢にも思っていませんでした。
CONNECTで、デザイナーの方やメーカーの方が込めた想いを受け取り、それをお客様へ届ける仕事をしている私にとって、これほど貴重な経験はありません…。
デザイナー本人から話を聞けるなんて、こんな機会は一生に一度あるかないか。そう思うと、デンマークへ行く前からこの日が楽しみで仕方ありませんでした。

▲ デザインスタジオの外観

そして実際にお会いしたオイヴィンさんは、本当に素敵な方でした。初めてお会いした私たちを、会った瞬間からとても温かく迎えてくださって、冗談を交えながらたくさんお話ししてくださいました。
気さくで、ユーモアがあって、とても温かい人柄。初めてお会いしたとは思えないほど自然に接してくださったことが、とても印象に残っています。

▲ スタジオの屋上からは、コペンハーゲンの街を眺めることができます。
まず到着して早々、スタジオの屋上へと連れていってくれました。このあたりは、もともと工業地帯だったそう。現在は開発が進み、小さなインダストリアルエリアへと少しずつ変わってきているそうです。屋上から街を眺めながら、そんな周辺の変化についても教えてくれました。

▲(左)スタジオに入ってすぐ、LE KLINTの「SWIRL(スワール)」がお出迎え。
(右)CARL HANSEN & SONから発売される新作照明も吊られていました。
オイヴィンさんのデザインスタジオは、8〜9人ほどのデザイナーでシェアしているそうです。
一つのスタジオを共有することで、立地の良い場所を借りやすくなったり、費用面での負担を抑えられたりするのはもちろん、デザイナー同士でアイデアを交換できる場にもなっているそう。

▲ プロトタイプをつくるための機械も、スタジオのみんなでシェアしているそうです。
「まだ存在しないもの」を想像する
オイヴィンさんは、デザイナーになる以前、デンマーク王立音楽院で音楽を学び、オーケストラでプロの音楽家として活動していました。
一見すると、音楽と照明デザインはまったく違う世界のように思えます。けれど、音楽を通して培った経験は、現在のデザインにも深くつながっていました。

実際にオイヴィンさんが演奏していた頃の写真も見せてくれました。持ち運ぶにはあまりにも重い楽器を選んでしまい、「間違った楽器を選んでしまった」と気づいたというエピソードを、冗談を交えながら楽しそうに話してくれました。
そんなオイヴィンさんが音楽を通して学んだことのひとつが、「まだ存在していないものを想像する」こと。
音楽を演奏するときには、まだ鳴っていない音を頭の中で思い描きます。それと同じように、デザインでも、まだ形になっていないものを想像する。
「誰にも聞こえない音を聴き、まだ作られていないものを見る練習をしていた」
オイヴィンさんはそんなふうに話してくれました。
でも、オイヴィンさんが大切にしている「想像する」ということは、何もないところから新しいものを生み出すことだけではありません。
この世界には、すでにたくさんの美しいものが存在している。でも、そのすべてが私たちに見えているわけではない。だからこそ、想像力を使って、まだ見つけられていないものを探し出す。
音楽家として培った「まだ聞こえていないものを想像する」力は、デザイナーとなった今も、オイヴィンさんのものづくりの根底にあるのだと感じました。
デザインは「ゼロから生み出す」ものではない

特に印象に残ったのが、「発明する」ということについてのお話でした。
オイヴィンさんによれば、デンマーク語の発明「opfinde」という言葉には、「探して(op)、見つける(finde)」という意味が含まれているそうです。
つまり、何かを完全にゼロから生み出すのではなく、すでに存在しているものの中から、まだ見つけていないものを探し出す。

だからこそ、デザインするときも「何が欲しいですか?」と人に尋ねるだけではいけない。まだ言葉になっていないもの、まだ誰も気づいていない可能性を、デザイナー自身の想像力で見つけ出す必要があるのだそうです。
その言葉を聞くと、オイヴィンさんのデザインがなぜ自然の形や現象からインスピレーションを得ているのかが、少し分かるような気がしました。
最高のデザインの師は「自然」

オイヴィンさんが「デザインの最高の師」と話していたのが、自然です。
自然界には、さまざまな構造や幾何学、繰り返しのパターンが存在しています。雪の結晶、水面に広がる波紋、植物の成長、らせん状の形。一見すると複雑に見える自然の中にも、実は一定の法則や美しい規則性がある。
オイヴィンさんは、そうした自然界の原理を見つけ出し、それを人間がつくるプロダクトへと変換していきます。

例えば、雪の結晶の構造は、バング&オルフセンのスピーカーや音響パネルのデザインにも取り入れられています。

また、水に石を落としたときに広がる波紋と、音が空気中を伝わる様子に共通するものを見出し、最初に手がけたスピーカーを四角形ではなく円形にしたというお話も。
自然をそのまま模倣するのではなく、自然の中にある「本質」を見つけ、それをデザインへ置き換える。それがオイヴィンさんのものづくりなのです。
「ランプ」にとっての太陽を考える

そんなオイヴィンさんが照明をデザインするとき、まず考えるのは「光とは何か」ということ。ランプにとって、私たちの太陽系でもっとも素晴らしい光源は「太陽」です。だからこそ、Pateraは太陽を思わせる球体の形へとたどり着きました。

けれど、ただ太陽のような丸い形にしたわけではありません。オイヴィンさんは、そこからさらに自然界に存在する幾何学や光の動きに目を向けました。
Pateraをよく見ると、球体を構成しているのは、たくさんの小さな「羽根」。その一つひとつが絶妙な角度で配置されています。
「美しい形」だけではない、Pateraの光
Pateraの魅力は、その印象的なフォルムだけではありません。オイヴィンさんが特にこだわったのが、光をどのようにコントロールするかということでした。

▲ 名作「アーティチョーク」と重なる美しさを感じます。
その設計思想の背景には、ルイスポールセンを代表する照明デザイナー、ポール・ヘニングセンの考え方があります。
ポール・ヘニングセンは、電球そのものの強い光を直接見せるのではなく、シェードによって光をコントロールし、眩しさを抑えながら美しい光をつくり出しました。Pateraにも、その考え方が受け継がれています。

オイヴィンさんは、外側の形から考えるのではなく、まず電球からスタートし、そこから光がどう広がるのかを考えて羽根を配置していったといいます。そのため、Pateraは球体でありながら、光がただ全方向へ拡散するわけではありません。

ある角度から見ると、内部からテーブルへ光が届く。一方で、別の角度から見ても、光源が直接目に入らないように設計されています。
見た目の美しさと、光の心地よさ。その両方を成立させるために、緻密な計算がされています。
フィボナッチ数列と黄金比
Pateraを近くで見ると、羽根の配置が少し不思議に感じられるかもしれません。左右対称に均等に並べられているわけではなく、どこかバランスが崩れているようにも見えます。その秘密が、フィボナッチ数列と黄金比です。

自然界には、植物の葉や花、渦巻きなど、フィボナッチ数列や黄金比に近い構造が数多く見られます。

Pateraにもその考え方が取り入れられており、羽根の配置にも自然界に見られる規則性が応用されています。だからこそ、近くで見ると複雑なのに、少し離れて見るとひとつの美しい球体に見える。

人工的につくられた照明でありながら、どこか自然の生命感を感じるのは、こうしたところにも理由があるのかもしれません。
シンプルに見えるものほど、つくるのは難しい
スタジオでは、プロトタイピングについてもお話を伺いました。オイヴィンさんによると、製品づくりにかける時間の95〜99%は、目には見えにくい細かな部分の試行錯誤に費やされているそうです。

▲ 照明はプロトタイプを作る事が大事で、部屋にどうやって光が出るかはコンピューターだけではわからないだろう?と語ってくれました。
パーツをどう組み合わせるか。どうすればしっかり固定できるのか。ひとつひとつの羽根を、どの角度で配置するのか。

一見すると簡単につくれそうな形でも、そこに至るまでには膨大な実験があります。Pateraの羽根も、最終的には「カチッ」と気持ちよくはまる構造になっていますが、その裏には細かな検証の積み重ねがあります。
完成したプロダクトがシンプルに見えるのは、つくる工程がシンプルだからではありません。たくさんの試行錯誤を重ねた結果、シンプルに見える形へとたどり着いている。オイヴィンさんのお話から、そんなものづくりの姿勢が伝わってきました。
光をひとつにしない。空間に複数の光をつくる
インタビューの最後には、照明の使い方についても教えていただきました。ポール・ヘニングセンが大切にしていたのが、空間に複数の光源をつくること。ここでいう光源は、照明器具だけではありません。

窓から入る光や、光を受ける素材、空間の中にあるさまざまなものも含まれます。部屋全体をひとつの強い光で均一に照らすのではなく、いくつもの小さな光が重なり合うことで、空間には明るい場所と暗い場所が生まれます。

そのコントラストが、部屋に奥行きや表情を与えてくれる。オイヴィンさんは、森の中で感じる光と影の変化にも、そのヒントがあると話していました。
私たちが自然の中で心地よいと感じる光のあり方も、もとを辿れば太陽から学ぶことができます。
オイヴィン・スロットさんにとって、デザインとは
デンマークのスタジオで直接お話を伺ったことで、これまで照明そのものを見て感じていた魅力に、またひとつ新しい視点が加わったように思います。
自然の中にある美しさや、目には見えないものまでじっくりと観察し、そこから新たな可能性を見つけ出していく。そんなオイヴィンさんの考え方を知ることで、彼がデザインした照明をこれまでとは少し違った角度から楽しんでいただけるのではないでしょうか。

今回のお話をきっかけに、オイヴィンさんが生み出した照明に興味を持っていただけたら嬉しく思います。お部屋への取り入れ方やサイズ選びなど、気になることがありましたら、CONNECT公式LINEよりお気軽にご相談ください!
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この記事を書いた人
miki
WEB制作を担当していましたが、北欧インテリアの奥深さに心を奪われ、現在はセールスへ転身。自宅でもCONNECT取扱いの家具や照明を取り入れ、眩しさのないやわらかな光と機能美あふれるタイムレスなデザインに囲まれた暮らしを体感し、「心地よい空間は人生の質を変える」と実感しました。その体験を一人でも多くのお客様に届け、デザイナーの想いが込められた名作を時代を超えてつないでいける存在でありたいです。








