ケアホルムの美学が凝縮した究極の一脚
ポール・ケアホルムが自邸で愛用したPK11は、単なる家具という存在を超え、「建築の一部として計算された構造美」を持つ一脚です。彼と同じ「思考の時間」を追体験できる空間を生み出します。
デザイナーの自邸にあった創造の特等席
▲生前の自邸の写真 奥:PK11(チェア)とPK51(テーブル)、手前:PK31(ソファ)
PK11は、ポール・ケアホルムが自身の邸宅のために、PK51テーブルとセットでデザインした一脚です。窓の外に広がる海や、刻々と移ろう光と空の色を眺め、彼はこの椅子に腰を下ろして数々のスケッチを描きました。彼にとってこの椅子は、単なる家具という存在を超え、自身の創造の源泉となる空間の一部でした。
ケアホルムは、この椅子に座りながら何を見つめ、どんな思考を巡らせていたのか。彼が愛し、日々を過ごしたこの場所にPK11を置くことで、ケアホルムが過ごした時間に思いを馳せる。そんなひとときを味わえるのも、PK11を迎えたからこそできる特別な体験です。
休息ではなく、思考を促す椅子の役割
「PK11は、長時間座ってくつろぐのに適した椅子なのか?」と問われれば、答えはそう単純ではありません。現代の機能的なデスクチェアのような柔らかなクッションや、容易に姿勢を変えられる可動性を備えているわけではないからです。
それでも、ケアホルムはPK11を自身のデスクのパートナーとして選びました。なぜ彼は、自身の創作活動のそばに、この椅子を置いたのでしょうか。
それは、PK11が「休息」のためだけではなく、「思考」に向き合うための椅子だったからかもしれません。座り心地の良さだけを追い求めるのではなく、姿勢を整え、目の前の仕事や思考に意識を向ける。そんな時間を支える椅子だったのではないでしょうか。
凛とした佇まいに身を置けば、自然と背筋が伸び、心は研ぎ澄まされていきます。余計なものが削ぎ落とされ、自分自身の思考と真っ直ぐに向き合うための「創造の緊張感」。それは、柔らかい座り心地では得られない、クリエイターや思想家が求める、精神に問いかけてくるような特別な時間です。
PK11は、あなたの日々の作業を、単なるルーティンから「思考を深める豊かなひととき」へと変えてくれるはずです。
建築的思考と素材へのこだわり
構造美|すべて見せる覚悟と余白
▲座面裏から見た、座面とステンレスフレームの接合部
PK11の最大の特徴は、ボルトやネジといった接合部さえもデザインの一部として昇華している点です。ポール・ケアホルムは「隠す部分があってはならない」という信念のもと、ステンレスの直線と座面の曲線を完璧なバランスで融合させました。
座面とステンレススチールフレームのつなぎ方や、肘置きと脚をつなぐビス周りの空間に絶妙な抜きや隙間、余白を作っています。この浮遊感は緻密な計算に基づいているため、空間に抜け感を与えながらも、揺るぎない安定感をもたらします。
あえて接合部を見せることで生まれる、工業的でありながら芸術品のような緊張感。どの角度から眺めても破綻のない美しさは、まるで空間に佇む彫刻のような存在感を放ちます。
手仕事|38枚の木片が紡ぐアームレスト
この椅子のアイコンでもある美しい曲線のアームは、アッシュ材(ラッカー仕上げ)の小さな木片を38枚重ね合わせ、削り出すという贅沢な工程を経て作られています。
横から見るとL字を描く、適度な傾斜を持たせた彫刻的かつ三次元の造形です。
ただの支えとしてではなく、強度と造形美を両立させるために施された緻密なテーパー(厚みの変化)は、まさに職人技の極み。背もたれからアームへと繋がるラインには一切の段差がなく、指でなぞったときに伝わる滑らかな手触りは、大量生産品にはない「人の手による温もり」を確かに物語っています。
素材|最良の異素材と細部へのこだわり
自然から受けたインスピレーションをもとに、木だけでなくステンレスやレザーといった異素材を取り入れています。選び抜かれた最良の素材を使用し、木工と金工(木とステンレス)を完璧に組み合わせて作り上げたPK11は、ケアホルムの作品の中でも珍しい一脚です。
脚やフレームのステンレスには、表面をマットな質感にする「サテン仕上げ」を施しています。光が乱反射し、上質で落ち着いた光沢が生まれます。高級時計のブレスレット等にも使用される熟練職人の高度な技術で、新たな傷が目立ちにくい特性もあるため、安心して長く使うことができます。
座面には、空間に品格を漂わせるような、厳選された上質なレザーを採用。木のアームとステンレスベースにまとまりを生み出し、3つの異素材が引き立て合い調和しています。使い手とその住まいと一緒に育っていく自然本来の時の流れを感じていただけます。
▶レザーについて、詳しくはこちらをご覧ください。
また、脚先にまでこだわっており、黒いグライドが付いています。
もちろん、床への傷を防いだり、椅子を安定させたりする実用的なパーツですが、脚先をすっぽりと覆うのではなく、脚のラインを活かすように取り付けられています。
黒いグライドが脚先にさりげなく添うことで、かえってPK11の端正な佇まいを引き立てています。
目立たない小さなパーツにまで、デザインへの配慮が行き届いています。
スタッフが実物で体感したリアルな声
浮いているように見えて、確かな安定感
最初に細いステンレスの脚を見たときは、「これでしっかり支えられるのかな?」という印象がありました。ところが、実際に持ち上げてみると、見た目からは想像できないほどの重みがあります。
細く削ぎ落とされたステンレスの脚と、質の高い木材。その異なる素材を組み合わせることで、軽やかな佇まいでありながら、座ったときにはしっかりとした安定感を感じられます。
見た目の軽やかさと、手にしたとき、座ったときの確かな重厚感。そのギャップこそ、PK11の魅力のひとつだと感じました。
近寄って初めてわかる手仕事の滑らかさ
この椅子の美しさは、近づいて見ることでよりはっきりと感じられます。あえて見せているビス留め部分の一つひとつが美しいデザインとして成立しており、背もたれからアームへのつなぎ目を指でなぞると、段差が全くありません。脚先の黒いグライドに至るまで、どんな些細なパーツも、どの角度から見ても洗練された美しさをもつように設計されていて、思わずうっとりしてしまいます。
クールな見た目と精神を研ぎ澄ます緊張感
無機質な見た目から「硬い椅子」と思われがちですが、座ると印象が一変します。
特に、ダークブラウンの「ヘイズレザー」は、軽く起毛させたヌバックタイプのレザーのため、光の当たり方で表情が変わる絶妙な色ムラ感があり、肌に吸い付くような質感と、しっとりと肌に馴染む手触りが格別です。
必ずしも座り心地が良いというわけではありませんが、この椅子だからこそ感じられる凛とした緊張感があります。腰を下ろすと自然と居ずまいがスッと正され、思考や気持ちが静かに澄んでいくような、精神を研ぎ澄ます特別な時間を実感しました。
空間と調和するコーディネート提案
木のテーブルと合わせれば、アームの木質感が空間になじみ、ステンレスの脚が全体をすっきりと見せてくれます。単体で主張しすぎず、手持ちの家具と調和しながらお部屋全体に統一感と洗練された空気感をもたらしてくれます。
また、圧倒的な抜け感により、視線を遮りにくいため、椅子を置いても空間を重たく見せません。さらに、窓から光が差し込むと、細いフレームのシルエットが床や壁に浮かび上がり、空間に印象的な陰影をつくり出します。
どんな家具とも調和し、暮らしの「時間価値」を高めるためのベースとして、安心して取り入れていただける一脚です。
CONNECTがおすすめするカラー
ヘイズレザーとサテン仕上げの調和
CONNECTが一番おすすめするカラーは「ヘイズレザー(ダークブラウン)」です。
マットなヴィンテージ感ある風合いと質感、落ち着いたダークブラウンという色味が、明るいアッシュ材のアームと鋭いステンレスベースに加わることで、引き締まったまとまりと温かみが生まれ、全体のバランス感がとても優れています。
絶妙な3次元の曲面を持った座面に光が当たったときには、ヘイズレザーならではの味のあるムラ感と美しく浮き立つ陰影を愉しむことができます。
ステンレスの冷たさや無機質なデザインと「温かみのある深いダークブラウンのレザー」のバランスは、ぜひ店頭で触れて確かめていただきたいポイントです。
使い込むほどに表面の艶が増し、持ち主の暮らしに合わせて深みを増していくため、道具として育てる楽しさを実感できる一脚です。
デンマークデザインの系譜とストーリー
空間における役割の違い
PK11は、単に他の椅子と比較される存在ではなく、デンマークデザインの歴史という大きな流れの中で重要な役割を担っています。
デンマーク近代家具の父、コーア・クリントが手掛けた「フォーボー・チェア(KK96620)」は、デンマークデザインの出発点とも言える一脚です。手仕事と人間工学、そして木・籐・レザーの組み合わせによる構造美は、後のデザイナーたちへ受け継がれていく基礎となりました。
コーア・クリントからオーレ・ヴァンシャー、そしてハンス J. ウェグナーへと連綿と受け継がれたデザインの系譜。そのウェグナーのもとで学び、1957年に脂の乗った時期のポール・ケアホルムが生み出したのが「PK11」です。クリントらのクラフツマンシップやリ・デザインの精神を継承しつつ、ステンレススチールと木材を融合させた幾何学的な緊張感で、空間に独自の規律をもたらしました。
さらに晩年の1979年、ケアホルムが手掛けた「PK15」では、再び木と籐という原点的な素材へと立ち返ります。衰退期にあった当時のデンマーク家具界に対し、初心に帰り木工デザインの可能性を再提示したPK15にも、PK11やフォーボー・チェアと通底する美しい普遍性が息づいています。
理想の時間で決める選び方の基準
選び方の基準は、どのような時間を過ごしたいかという目的に委ねられます。
フォーボー・チェアからPK11、そしてPK15へと至るデザインの連なり。歴史の重みとクラフツマンシップを感じたいならフォーボー・チェア、軽やかで自由なラウンジシーンにはPK15が寄り添います。
そして、精神を研ぎ澄まし深い思索と創造の時間を構築したいと願うなら、PK11が真価を発揮します。デンマークデザインの脈々と流れるストーリーを部屋に迎え入れ、日々の作業を豊かなひとときへと昇華させてくれます。
デザイナー|ポール・ケアホルムの美学
ポール・ケアホルムは、1929年にデンマーク北西部の田舎町で生まれました。15歳で家具職人に弟子入りし、18歳でキャビネットメーカーのマイスターの称号を取得。ハンス J. ウェグナーのもとで様々なことを学び、バウハウスからも大きな影響を受けていました。
デンマークのクラフトマンシップの精神を継承しながらも、型にはまらない異色の才を示し続け、北欧モダン家具の歴史に大きく名を残したデザイナーです。
PKシリーズは、51歳という若さで早世したケアホルムに敬意を表し、1982年からフリッツ・ハンセンによって製造が開始されました。
彼の生み出した名作の数々は時代を超えて多くのファンに愛され、現代の名だたるデザイナーや建築家たちからも、非常に高い評価を得ています。
ポール・ケアホルムについてもっと知りたい方はこちら
製品仕様
サイズ:W64 × D44 × H69(SH43)cm
アーム:アッシュ材(ラッカー仕上げ)
フレーム:ステンレススチール(サテン仕上げ)
座面:アニリンレザー(オーラ / ヘイズ / グレース / ナチュラル から選択)
張地・カラーバリエーション
オーラレザーとグレースレザーはどちらも厳選された最上級の本革ですが、仕上げの加工が異なります。タフさを求める方にはオーラレザー、自然な風合いと豊かな表情の変化を味わいたい方にはグレースレザーがおすすめです。
オーラレザー

ブラック

ブラックブラウン

ウォルナット

コニャック

ベージュ
オーラレザーは保護コーティングが施されているため、汚れに強く、お手入れもしやすいという特徴があります。
ヘイズレザー

ダークブラウン

アンスラサイト

ウォルナット

ベージュ
グレースレザー

ブラック

ダークブラウン

ウォルナット

チェスナット

コンクリート
グレースレザーはベジタブルタンニン(植物由来のオイル)でなめされているため、レザー本来のなめらかな手ざわりが魅力的です。 未加工の自然な表面のためナチュラルマーク(皮本来のシワなどの模様)があり、時間の経過とともに美しい自然なツヤが生まれます。
ナチュラルレザー

ナチュラル
≫レザーについて詳しくはこちら
FRITZ HANSENの公式サイトにて、張地・カラーのシミュレーションやAR機能を使った設置想定ができます。
ぜひお試しください!
https://www.fritzhansen.com/ja/categories/by-series/pk11/pk11
お手入れの仕方・お取り扱いの注意点
■レザー(座面)
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/leather
レザーのケアキットはこちら
https://www.connect-d.com/c/15/95/1688/uni-lekitp-lm100
■木材(アーム)
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/lacquered-or-coloured-wood
■ステンレススチール(脚部)
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/stainless-steel
FAQ|よくあるご質問
Q.組み立ては必要ですか?
A.組み立ての必要はございません。熟練の職人によって組み立てられた完成品でお届けいたしますので、開梱後すぐにご使用いただけます。
Q.脚の先端で床を傷つけませんか?
A.脚先には実用的かつ造形美に優れた黒のグライドが付いており、床の傷や転倒を防止します。
Q.PK11のアーム部分(肘掛け)で、部位によって質感や触り心地が異なる印象を受けるのはなぜですか?
A.部位によって意図的に仕上げを変えているわけではなく、製造工程における素材の特性によるものです。上面は木目が比較的一様で塗料が均一に浸透しやすい一方、内側は複数の木材(積層材)を削り出して製作しているため、質感や継ぎ目がわずかに見受けられる場合があります。