20世紀モダンデザインを象徴するラウンジチェア『PK22』
1956年に発表されたポール・ケアホルムの傑作ラウンジチェア「PK22」。
発表の翌年、ミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞し、ケアホルムの名を世界的に知らしめました。
この椅子は今日に至るまで、世界中の美術館・コレクションに収蔵されており、「20世紀のモダンデザインを象徴する一脚」として位置づけられています。
▲国立新美術館(The National Art Center, Tokyo)
一度見たら忘れられない、ミニマリズムと自然美を追求したデザイン
ポール・ケアホルムは、バウハウスの巨匠、ミース・ファン・デル・ローエの名作「バルセロナチェア」に着想を得て、PK22をデザインしました。
偉大な先人への敬意を込めつつも、その意匠から無駄を徹底的にそぎ落とし、さらに洗練されたモダンな佇まいへと昇華。
一目見た瞬間に心を奪われる、究極のミニマリズムと彫刻的な美しさが共存する椅子です。

PK22は、ラウンジチェアにありがちな「大きさ」や「重たさ」といった先入観を軽やかに覆します。
視覚的な圧迫感を極限まで取り除いたそのプロポーションは、どこに置いても空間に溶け込みながら、強い個性と静かな存在感を放ちます。
ラウンジチェアとしての快適さを確保しながらも、驚くほどの抜け感をもったシルエットは、まさに唯一無二。
自宅のリビングはもちろん、建築的な空間やギャラリーにもよく映えるデザインです。

ポール・ケアホルムが目指した「自然美」。素材の本質を見つめたデザイン哲学
PK22のデザインの根底には、ポール・ケアホルムの揺るぎない信念があります。
それは「美しさの基準は自然界にある」という思想。

▲写真右:若き日のポール・ケアホルム。PK22のフレームを入念に見つめる。
彼は暇を見つけては一人で、あるいは家族とともに森や海へ出かけ、自然のなかからインスピレーションを受け取っていました。
木の枝がのびるようなスチールフレームのライン。
レザーもスチールも、彼にとっては木と同様、時間とともに味わいを深めていく「生きた素材」でした。

▲ケアホルムの生前に行われた展示会の一場面。木々の枝の風景写真をバックに、連なるように置かれたPK22のフレームからは、枝がしなやかに伸びていくような生命力が感じられる。
こうした背景から生まれたPK22は、どれほど長く使い続けても決して色褪せることのない、普遍的な美しさを宿すラウンジチェアとして、世界中のデザイン愛好家に愛され続けています。
まるでハンモックのような、至極の座り心地

数あるモダンチェアのなかでも、PK22がこれほどまでに語り継がれてきた理由。
それは、このデザインの鋭さ ──まるで線で描いたような完璧なミニマリズム── に、想像を超える座り心地が共存しているからに他なりません。
ただ美しいだけの椅子ではない。
「身体で感じるデザイン」という、ポール・ケアホルムの真髄がここにあります。
座り心地のヒミツ①:脚と背中にフレームが当たらない構造
PK22は、ケアホルムの初期作であるPK25やPK4から発展した、彼の思想が結晶化されたプロダクトです。
比較してみると、太ももの裏や背中にあたる位置に一切フレームが存在しないという構造的特徴が際立ちます。

また、座面下に走るフレームは、U字型に大きくカーブしており、座ったときに身体へ直接フレームが触れない設計になっています。
つまり、身体を支えているのは、張地のレザーそのもの。
ハンモックのように柔らかく、しかし張りを保ったまま、絶妙に身体にフィットする座り心地が実現されているのです。

しかもこの構造、ただの“柔らかさ”では終わりません。
U字フレームが左右のスチールフレームをしっかりと支えることで、張地のテンションはしっかりと保たれます。
年月とともにレザーが多少伸びることは避けられませんが、フレーム自体はびくともせず、適度な張り感と心地よさを長年維持。
まさに、一生ものの快適さを備えたチェアなのです。
座り心地のヒミツ②:重心の低さと、座面の絶妙な傾斜
もうひとつ、PK22が他のラウンジチェアと一線を画す理由。
それは、「重心の低さ」と「傾斜の角度」です。

座高が低く設定されていることで、床との距離感が近くなり、自然と深いリラックスへと誘います。
さらに、座面には繊細な角度で傾斜がつけられており、座った瞬間に視線が少し上向く絶妙な姿勢に。
これが、身体全体を安心感で包み込む、極上の座り心地を生み出しています。
長時間座っていても疲れず、自然と身を預けていたくなる。
それでも、決して“もたれかかるだけ”の椅子ではありません。
▲左右に走るフレームに手を添えれば、起き上がる動作もスムーズ。
しかも、膝裏にバーがない設計のため、立ち上がりのストレスも少ないです。
こだわり抜かれた、最上級の素材
レザーとスチールという異素材の組み合わせが生む、モダンで豊かな表情が魅力のPK22。
「私が表現しようとするのは、素材自身の言葉なのです。」
ポール・ケアホルムはそのような言葉を残したように、素材にとことんこだわり抜いたデザイナーです。

この世で一番良いものを使う、という信念のもと、生涯家具デザインを続けたケアホルムの遺志を受け継ぎ、現在はFRITZ HANSEN社が妥協を許さない徹底した素材選びと、その優れた技術力によって、素材の良さを最大限に生かした加工・仕上げを行い、ひとつひとつ丹念に家具を作っています。
スチール

ポール・ケアホルムのデザインにおける最も際立った特徴── それは、スチールという素材に対する唯一無二の視点にあります。
ただ単に「構造材」として用いたのではありません。
彼は、無機質で工業的なイメージを持つスチールに、木やレザーと同等の“素材としての美しさ”と“時間と共に深まる風合い”を見出しました。
まるで高級な無垢材を扱うように、スチールの質感・反射・佇まいにまで目を凝らし、そのポテンシャルを引き出すことに心血を注いだのです。
静けさに包まれた光沢感── サテン仕上げがもたらす、上質な美しさ
PK22のスチールベースには、ケアホルムが特に重視していた「サテン仕上げ」が施されています。
この加工は、表面をマットな質感に整えることで、光の屈折を穏やかに乱反射させ、しっとりとした上品な光沢を生み出します。
光を鈍く返すその表情は、見る角度や時間帯によって微細に変化し、空間に静けさとリズムをもたらします。

これは、単に見た目の美しさを演出するだけではありません。
サテン仕上げは高級時計のブレスレットなどにも用いられる高度な技術で、表面のキズが目立ちにくく、日常的に使う中でも美しさを長く保てるという利点もあります。

▲PK22のフレームには、通常のスチールではなく「ステンレススチール」が採用されています。
そのため、腐食やサビに対して非常に強く、経年による劣化に強いという実用性も兼ね備えています。
ステンレススチールのお手入れはこちら
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/stainless-steel
PK22のコーディネート例 空間に広がりと余白をもたらすラウンジチェア
シャープなライン、そしてどこか浮遊感すら感じさせる軽やかなデザイン。
ポール・ケアホルムの代表作「PK22」は、究極までそぎ落とされた構造によって、空間に圧迫感をまったく与えず、抜け感に満ちた佇まいを見せてくれます。
また、重心の低さが視線を遮らず、自然と視界が開けて、美しい余白を感じるような広がりを演出。リビング空間に、静けさと洗練をもたらす1脚です。
一脚使いで
主張しすぎない静けさをまといながら、周囲の家具や空間と自然に調和する。それでいて、他にはない確かな存在感を放つ── それがPK22です。
この一脚がそこにあるだけで、空間の印象が一変するほどの影響力を備えています。単なる椅子ではなく、空間の質を引き上げる「存在」として、唯一無二の魅力を放ちます。
二脚使いで
PK22を愛する人々の中には、2脚並べてのコーディネートを楽しむ方も多く見られます。
2脚が並ぶことで生まれる連続性とリズム感が、PK22の持つラインの美しさをより一層引き立て、唯一無二の洗練されたリビングシーンを創出します。
大切なお客様を迎え、ゆったりと談笑を楽しむ。そんな特別な時間のための空間づくりにも、この上ない1脚と言えるでしょう。
サイズ

在庫状況・納期・搬入について
PK22は「オーラレザー・ブラック」仕様のみ国内在庫モデルとなっており、その他の仕様は海外からの取り寄せとなっております。
納期の目安
【オーラレザー・ブラック】メーカー在庫時は約2~3週間でのお届けです。欠品時は都度確認が必要なため、お気軽にお問い合わせください。
【その他】約5か月
組み立て済み・段ボール梱包にてお届けし、設置・残材処理まで無料で行います。
デザイナー:ポール・ケアホルムの美学
ポール・ケアホルムは、1929年にデンマーク北西部の田舎町で生まれました。
15歳で家具職人に弟子入りし、18歳でキャビネットメーカーのマイスターの称号を取得。
ハンス J. ウェグナーのもとで様々なことを学び、バウハウスからも大きな影響を受けていました。
デンマークのクラフトマンシップの精神を継承しながらも、型にはまらない異色の才を示し続け、
北欧モダン家具の歴史に大きく名を残したデザイナーです。
PKシリーズは、51歳という若さで早世したケアホルムに敬意を表し、
1982年からフリッツ・ハンセンによって製造が開始されました。
彼の生み出した名作の数々は時代を超えて多くのファンに愛され、
現代の名だたるデザイナーや建築家たちからも、非常に高い評価を得ています。
時間と空間をつくる家具デザイン
ポール・ケアホルムは、自らを「家具建築家」と称することを好みました。
彼は“ただ通り過ぎるだけでなく、明確な人間関係が構築される空間”を目指し、
家具が空間に与える作用と、そこで生まれる人間の営みまでをも見据えて、ひとつひとつの家具を設計していったのです。
▼生前の自邸の写真 奥:PK11(チェア) 手前:PK31(ソファ)

ケアホルムのデザインは、徹底的に無駄をそぎ落とし、
構造を明確にすることで素材ひとつひとつの美しさが際立っています。
“家具が明晰な美しさを持っていれば、そこで過ごす人々の関係性も風通しの良い澄んだものになる”
そんなことを彼は考えていたようです。
美の追求
PKシリーズには、ポール・ケアホルムによる徹底的な美の追求が見てとれます。
家具は暮らしの中で、一般の多くの人に使われる実用的な工業製品です。
しかし同時に、ケアホルムは家具をつくるうえで、自らの美学を表現することにも一切の妥協を許しませんでした。
“美的感覚やデザインに価値を感じないのなら、段ボールに座っているようなものだ”
ケアホルムの家具デザインの背景には、このような確固たる哲学がありました。
▼1952年 チューリッヒの応用美術展の写真(右奥にPK25、手前にはPK60が並べられ、左奥にはPK0の座面が裏返しで吊り下がっている)

ポール・ケアホルムの大きな功績の一つは、それまで家具製作にあまり使われてこなかった木以外の素材を、非常に美しく機能的な素材としてデザインに取り入れたことです。
PKシリーズを象徴する代表的な素材は「スチール」。
ケアホルムは、“木材やレザーと同様に、スチールも風合いを増してゆく芸術的な素材だ”と考えました。
その厚みや表面の加工方法にいたるまで何度も試行錯誤をくり返し、
無機質で冷たい素材と思われていたスチールが、本当は木にも劣らない美しい素材であることを示したのです。
▼森の写真パネルを背景に、PK22のフレームがずらり。ケアホルムが自然と調和するデザインを追い求めていたことがわかる1枚。

ケアホルムの作品は、他の木製家具とは異質な素材とデザインでありながら、
有機的で、どこか自然の美を感じさせる豊かな表情をもっています。
そこには、“美しさの基準は自然界にある”と常に考えていた、彼の自然への憧憬が表れています。
卓越したセンスで描かれた曲線美。選び抜かれた素材のなめらかな手ざわり。澄明な構造と生き生きとしたプロポーション。
木々の伸びやかな幹や枝のような、自然の中に遥か昔から息づいている根源的な美しさを、
家具デザインを通して私たちに伝えてくれているように思えます。
リ・デザインの精神
ケアホルムは、偉大な先人のデザイナーや建築家に敬意を払い、彼らの作品を熱心に研究していました。
そのうえで、より一層そのデザインの本質に迫り、洗練されたものを生み出そうとする「リ・デザイン」の精神で、
先人たちを超えていこうと常に挑戦していたのです。
PK80も、ミース・ファン・デル・ローエとリリー・ライヒが1930年にデザインしたカウチソファをモデルに制作されました。

関わりのあったオーレ・ヴァンシャーやハンス J. ウェグナーといった北欧モダンの先駆者や、
ミース・ファン・デル・ローエをはじめとするバウハウスの偉大な先人たちから大きな影響を受け、
伝統と歴史の流れにしかと身を置きながら、常に新しい価値を生み出し続けたポール・ケアホルム。
彼の作品には、デンマーク家具の歴史と一人の人間の生き様が深く刻み込まれています。
ポール・ケアホルムについてもっと知りたい方はこちら
FRITZ HANSEN
時代を超えるデザインが集う、北欧の老舗ブランド

フリッツ・ハンセンは、創業150年以上の歴史を誇るデンマークの老舗家具ブランドです。創業以来、アルネ・ヤコブセンやポール・ケアホルムといった巨匠デザイナーとのコラボレーションにより、時代を超えて愛される名作を生み出し続けています。
クラフツマンシップと北欧のデザイン哲学が融合した家具は、木製以外にもスチールやレザーといった上質な素材と、洗練されたフォルムが特徴。セブンチェアやエッグチェアなど、彫刻作品のような名作の数々。単なる家具ではなく、空間全体を洗練された雰囲気に包み込みます。家具のみならず、照明やアクセサリーまで、トータルインテリアを提案できる豊富なラインナップも魅力です。