70年の時を経て食卓へ。二枚のシェルが生み出す、静かな造形美「PK3」
「名作チェアをダイニングに並べたいけれど、空間が圧迫されてしまわないか不安…」
「来客用の椅子は必要だけど、空間のデザインを損なうようなものは置きたくないし、妥協したくない!」
「一見座り心地が良くなさそうな板座の椅子で、本当に心地よい時間が過ごせるのだろうか?」
本質的な美しさを愛するからこそ、尽きることのないインテリアの悩み。そのすべての答えが、この『PK3』にあります。
美しい暮らしを求める人にとって、椅子選びは一つの哲学。巨匠が遺した設計図に宿る、その真価を紐解いてみましょう。
進化と継承
PK3は、ケアホルムの美学が時を超えて響き合う“交差点”のような存在です。
たとえば、伝説的な「PK0」。
▲1997年以降、一度も復刻されていない幻の作品と言われていた『PK0』
成形合板で彫刻的な曲線を描いたそのデザインは、2022年、最新技術によって「PK0 A」として復刻を遂げました。
▲PK0に強度を持たせ、復刻を果たした『PK0 A』
そして2024年、同じく木という素材で構造美を追求した「PK23」が続き、その翌年。満を持してこのダイニングチェア『PK3』が、私たちの暮らしへと届けられました。
また、スチールと麻ひもによる軽やかな構成で知られる「PK4」とも、視線の先にある哲学を共有しています。
▲PK25の研ぎ澄まされたシルエットを引き継いだ『PK4』
PK4が「線」の構成によって空間に圧倒的な開放感をもたらしたように、PK3もまた、極細のスチール脚と低く設計された背もたれにより、ダイニングに心地よい“抜け”を生み出します。
素材感や用途はそれぞれ異なりますが、「視覚的な圧迫感を排除し、身体をしなやかに支える」というケアホルムが愛した空気感は、この『PK3』にも、静かに、そして鮮やかに息づいています。
「高さ75cm」が創る、圧倒的な開放感
テーブルを覆い隠さないミニマルな佇まいは、空間を広く見せるだけでなく、レストランや店舗の演出にも最適です。
セブンチェア等に比べ背もたれが低いため、テーブルにセットした際の収まりが良く、水平なラインが強調されます。
細部に宿る、引き算の美学。
職人の目と手による「ブックマッチ」
成形合板のシェルは、木目が左右対称(ブックマッチ)になるよう熟練の職人が厳格に選定。木の選定段階から関わるこだわりが、シンプルさの中に圧倒的な品格を宿しています。
幾何学的なベース構造
座面下では、4本のフラットスチールが互いを支え合うように組み合わされています。プライウッドを緻密な角度でカットし接合する手法など、随所に高度な技術を詰め込みながら、それをあえて感じさせない。その凄みこそがケアホルムのデザインです。
見た目を裏切る、吸い付くような安心感。
一見すると、硬質で座り心地よりも造形を優先したデザインのように見えるかもしれません。
しかし、PK3の本当の魅力は、実際に腰を下ろしたその瞬間に伝わってきます。
身体に寄り添う、成形合板の「しなり」
3次元曲面の成形が難しかった時代に、あえてシェルを分割することで、理想の「しなり」を表現しました。その座り心地は、名作セブンチェアやアントチェアと遜色ないほど。腰にぴったりと寄り添い、適度な反発力で押し返してくれる安心感があります。
また、座と背をつなぐ2つの小さな金具が、構造の要でありながら、まるでアクセサリーのような存在感。
木のやわらかさと金属の静けさが、美しいコントラストを生み出しています。
肌当たりまで計算された、繊細な質感
印象的なシェルの割れ目も、座ってみれば不思議と意識から消えていきます。そして気づくのは、想像以上にやさしい肌当たり。セブンチェア等の板座と比べて、しっとりとマットな木肌は滑りづらく、座った時の安定感を生みます。摩擦さえも心地よい、実際に座ってみないと気づきにくい繊細な魅力が詰まっています。
光の移ろいとともに、マットな木肌が繊細な陰影を纏い、成形合板の柔らかなラインを優美に浮き彫りにします。
そして、そこには静寂な時間が流れます。
この椅子がもたらすのは、物理的な座り心地だけではありません。
視線を遮らず、空間の奥へと光を通すその佇まいは、まさに「呼吸する彫刻」なのです。
彫刻的な美しさに、スタッキングの利便性を。
PKシリーズ初、最大5脚のスタッキング
驚くべきは、この彫刻的なデザインでありながら、最大5脚までのスタッキングが可能という実用性です。名作の風格を纏いながら、現代の暮らしに不可欠な機能性を高い次元で両立させています。
日常をギャラリーに変える。
メインダイニングの主役として
全てをPK3で揃えることで、背もたれの高さが一定に揃い、空間に美しい水平ラインの秩序が生まれます。
「誕生日席」のアクセント
セブンチェアやアントチェアの中に、1脚だけ「アクセント」として配置。異素材のスチール脚が、食卓に心地よい緊張感を与えます。
玄関や書斎のオブジェとして
靴を履く際の腰掛けや、思索のひとときに。壁際に置くだけで、まるでアートのように空間を彩ります。
デザイナー:ポール・ケアホルムの美学
ポール・ケアホルムは、1929年にデンマーク北西部の田舎町で生まれました。
15歳で家具職人に弟子入りし、18歳でキャビネットメーカーのマイスターの称号を取得。
ハンス J. ウェグナーのもとで様々なことを学び、バウハウスからも大きな影響を受けていました。
デンマークのクラフトマンシップの精神を継承しながらも、型にはまらない異色の才を示し続け、
北欧モダン家具の歴史に大きく名を残したデザイナーです。
PKシリーズは、51歳という若さで早世したケアホルムに敬意を表し、
1982年からフリッツ・ハンセンによって製造が開始されました。
彼の生み出した名作の数々は時代を超えて多くのファンに愛され、
現代の名だたるデザイナーや建築家たちからも、非常に高い評価を得ています。
時間と空間をつくる家具デザイン
ポール・ケアホルムは、自らを「家具建築家」と称することを好みました。
彼は“ただ通り過ぎるだけでなく、明確な人間関係が構築される空間”を目指し、
家具が空間に与える作用と、そこで生まれる人間の営みまでをも見据えて、ひとつひとつの家具を設計していったのです。
▼生前の自邸の写真 奥:PK11(チェア) 手前:PK31(ソファ)
ケアホルムのデザインは、徹底的に無駄をそぎ落とし、
構造を明確にすることで素材ひとつひとつの美しさが際立っています。
“家具が明晰な美しさを持っていれば、そこで過ごす人々の関係性も風通しの良い澄んだものになる”
そんなことを彼は考えていたようです。
美の追求
PKシリーズには、ポール・ケアホルムによる徹底的な美の追求が見てとれます。
家具は暮らしの中で、一般の多くの人に使われる実用的な工業製品です。
しかし同時に、ケアホルムは家具をつくるうえで、自らの美学を表現することにも一切の妥協を許しませんでした。
“美的感覚やデザインに価値を感じないのなら、段ボールに座っているようなものだ”
ケアホルムの家具デザインの背景には、このような確固たる哲学がありました。
▼1952年 チューリッヒの応用美術展の写真(右奥にPK25、手前にはPK60が並べられ、左奥にはPK0の座面が裏返しで吊り下がっている)
ポール・ケアホルムの大きな功績の一つは、それまで家具製作にあまり使われてこなかった木以外の素材を、非常に美しく機能的な素材としてデザインに取り入れたことです。
PKシリーズを象徴する代表的な素材は「スチール」。
ケアホルムは、“木材やレザーと同様に、スチールも風合いを増してゆく芸術的な素材だ”と考えました。
その厚みや表面の加工方法にいたるまで何度も試行錯誤をくり返し、
無機質で冷たい素材と思われていたスチールが、本当は木にも劣らない美しい素材であることを示したのです。
▼森の写真パネルを背景に、PK22のフレームがずらり。ケアホルムが自然と調和するデザインを追い求めていたことがわかる1枚。
ケアホルムの作品は、他の木製家具とは異質な素材とデザインでありながら、
有機的で、どこか自然の美を感じさせる豊かな表情をもっています。
そこには、“美しさの基準は自然界にある”と常に考えていた、彼の自然への憧憬が表れています。
卓越したセンスで描かれた曲線美。選び抜かれた素材のなめらかな手ざわり。澄明な構造と生き生きとしたプロポーション。
木々の伸びやかな幹や枝のような、自然の中に遥か昔から息づいている根源的な美しさを、
家具デザインを通して私たちに伝えてくれているように思えます。
リ・デザインの精神
ケアホルムは、偉大な先人のデザイナーや建築家に敬意を払い、彼らの作品を熱心に研究していました。
そのうえで、より一層そのデザインの本質に迫り、洗練されたものを生み出そうとする「リ・デザイン」の精神で、
先人たちを超えていこうと常に挑戦していたのです。
関わりのあったオーレ・ヴァンシャーやハンス J. ウェグナーといった北欧モダンの先駆者や、
ミース・ファン・デル・ローエをはじめとするバウハウスの偉大な先人たちから大きな影響を受け、
伝統と歴史の流れにしかと身を置きながら、常に新しい価値を生み出し続けたポール・ケアホルム。
彼の作品には、デンマーク家具の歴史と一人の人間の生き様が深く刻み込まれています。
ポール・ケアホルムについてもっと知りたい方はこちら
サイズ
高さ 75cm / 幅 59.5cm / 奥行き 49.5cm / シートの高さ 45.5cm
張地・カラーバリエーション
■シェル:カラードアッシュ(ブラック)/ ベース:スチール(クローム仕上げ)
■シェル:カラードアッシュ(ブラック)/ ベース:スチール(ブラック粉体塗装仕上げ)
■シェル:ナチュラルウッド(オーク)/ ベース:ベース:スチール(クローム仕上げ)
■シェル:ナチュラルウッド(ウォルナット)/ ベース:スチール(クローム仕上げ)
※2026年より、全シェルでブラック脚(ベース)が選択可能になりました。
FRITZ
HANSENの公式サイトにて、カラーのシミュレーションやAR機能を使った設置想定ができます。ぜひお試しください。
https://www.fritzhansen.com/ja/categories/by-series/pk3/pk3?sku=PK3-OAK001-CST_H43-GFN-LKN
国内在庫モデル(短納期)
お急ぎの方のために、以下の人気4モデルをご用意しています。
足元に宿る、素材への敬意。
標準仕様:脚先にコルクをあしらって
スチールの先端部に対して、天然素材であるコルクを丁寧にあしらった、デザインの純度を最も保つ仕様です。プラスチック製のグライドを使用せず、あえてコルクを採用する点に、異素材の組み合わせを愛したケアホルムの美学が現代にも受け継がれていることが感じられます。
フェルトがない分、床の上で不意に滑りすぎることがなく、座った際にしっかりと踏ん張りが効く「安定した座り心地」が得られます。椅子を引く動作の滑らかさよりも、ケアホルムらしいストイックな足元の美しさと、座っている時の「静止感」を大切にしたい方におすすめです。
フェルト有り(受注生産のため納期は約5か月かかります。)
立ち座りの際の摩擦音を抑え、よりスムーズな出し入れを重視したい方へ。
床の傷防止効果も高く、動作の滑らかさを優先するライフスタイルに適しています。
お手入れの仕方・お取り扱いの注意点
・木材(ラッカー / 着色仕上げ)のお手入れ
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/lacquered-or-coloured-wood
・フレーム(ステンレススチール)のお手入れ
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/stainless-steel
・フレーム(粉体塗装仕上げ)のお手入れ
https://www.fritzhansen.com/ja/sales-support/care-and-maintenance/powder-coated-metal
よくある質問
Q:座面の割れ目は気になりますか?
A:計算された設計により、座った際の違和感はありません。むしろ心地よい「しなり」を生む重要な要素です。
Q:スタッキングは何脚まで?
A:最大5脚まで可能です。
Q:正規品ですか?
A:すべてフリッツ・ハンセン社の正規品です。
「完璧な均衡」を、あなたの日常に。
PK3を手に入れることは、単に椅子を買うことではありません。それはポール・ケアホルムが到達した「完璧な均衡」という哲学を、あなたの日常に迎え入れるということです。
時代に左右されない普遍的な美しさが、空間を広く、そして心豊かに変える。そんな一生モノの満足感をお届けします。